DATE:2021.04.22

LINEドクターは患者さんから信頼を得るための手段

 

横浜市港北区にあるここクリニック。岡田里佳院長は、待ち時間の長い患者さんの負担を軽減するために、約2年前からオンライン診療を始めた。さまざまなシステムで経験を積み、現在ではLINEドクターを活用して新患・再診患者さんのニーズに応え、さらに他科や在宅医療に携わる医師らの支援も行っている。オンライン診療の活用事例などについて岡田院長に詳しく伺った。

ここクリニック 院長 岡田里佳先生

診療科目:皮膚科、アレルギー科

横浜市港北区にあるここクリニックは、皮膚科のなかでも特にアレルギー領域や膠原病など内科的な領域にまたがる診療を得意とする。院長の岡田里佳先生は皮膚科専門医に加え認定内科医、アレルギー専門医、リウマチ専門医の資格を取得。患者さんの誰もが持っている悩む気持ちに寄り添い、「ここ」に来たら、元気になれる、安心できる!というクリニックを目指している。岡田先生は2年ほど前からオンライン診療を始め、いくつかのシステムを経て、現在ではLINEドクターを使用している。

妊婦さんや小さなお子さんお持ちの方の利用が多い

──まず、岡田先生がオンライン診療を始めた理由を教えてください。

 

私がオンライン診療に興味を持ったのは、日頃から外来の待ち時間が長いことを申し訳なく思っていたからです。2時間待たせて診療は3分足らず…ということもよくありました。

オンライン診療は、すべてが対面診療にかわるものではないですが、オンライン診療なら待合室で長時間お待たせしませんし、対面診療を必要としなければ通院する必要すらありませんよね。そう考えてオンライン診療を始めたのが2年ほど前のことです。最近では新型コロナウイルス感染症の影響もあり、オンライン診療を選ぶ患者さんが増加しています。

 

──どのような患者さんがオンライン診療を選んでおられるのでしょうか?

 

新型コロナウイルスの影響で、時限的ではありますがオンライン診療が初診から受診可能となってからは、患者さんの選択肢が広がり初診からオンラインを選ぶ方も出てきました。特に妊婦さんや小さいお子さんをお持ちの方などが多いですね。「感染が怖いからオンラインで診てもらえてよかった」と言ってくださることもあります。

最近は認知が広がってきたのか、初診からオンラインを選ぶ花粉症の方も増えてきました。多くは「毎年この薬を飲んでいます」という感じで受診されますね。

 

また、こんな経験もあります。ニキビに悩む中高生で、外に出づらかったり部活で忙しかったりするなどの事情があって昼間の来院は難しかったのですが、夕方の時間に保護者と一緒にオンラインでつないで、ビデオで顔を見ながら診察させていただいて、うまく治療に結びつけられました。

さらに、寝たきり高齢者の皮膚トラブル(褥瘡など)について、ご家族がスマホで見せてくれながら診察することもありました。身体が動きにくい人をわざわざ連れてくる手間を考えると、とても便利ですよね。

──そういったニーズは今後さらに増えそうですね。

 

他科の医師からのニーズもあるんです。身近に皮膚科専門医がいない地域では、内科のかかりつけの先生が皮膚疾患も診ることが多いです。しかし、ちょっと心配な症例があった場合は、やはり皮膚科専門医の意見が聞きたいようです。実際にオンラインで診させていただくと、それほど心配する必要がない皮膚疾患ではあったのですが、その先生は「専門の先生と話せてよかった」と喜んでいただけました。コミュニケーションをとるだけでも安心していただけたのでしょうか。力になれたのかなと感じました。

 

また、在宅医療の場でも貢献できたという経験があります。在宅療養している寝たきりの患者さんには皮膚トラブルが多く、普段は内科をベースとした在宅医の先生が対応してくださっているのですが、やはり限界があります。在宅医では対応しきれない場合は、私がそこにオンラインで介入させていただいて継続的に診ています。その先生からも「すごくありがたい」とおっしゃっていただけました。

 

──専門性を活かして困っている医師を手助けすることができますし、お互いに勉強にもなりますね。

 

その通りです。オンラインを通じて専門性を活かして補助的に介入できるのは大きな利点であると思います。

慢性患者さんとオンライン診療は相性がいい

再診の方はお声がけした約半数以上の方が利用意向示す

 

──すでに通院されている患者さんにオンライン診療を紹介することはありますか?

 

当院でオンライン診療ができるということを、院内の掲示やホームページ上で案内しています。また、診察時にオンライン診療に親和性が良さそうだなと感じた患者さんには、個別にご案内することもありますし、事務スタッフや看護師から案内をお渡しすることもあります。

 

特に忙しそうな方や待ち時間を嫌がりそうな方にはオンライン診療をご紹介するようにしています。「同じ薬でも診察が必要ですか?」「何時くらいが混んでいますか?」「待ち時間はどれくらいですか?」と尋ねてくるような慢性疾患の患者さんにご案内すると、オンライン診療を使うようになる可能性が高いですね。

 

 

──具体的に、どのように患者さんにオンライン診療を紹介されていますか?

 

LINEドクターから提供いただいた資料(スターターキット)を使っているのですが、なかでも名刺サイズのクリニックカードが好評です。印刷されているQRコードを読み取って、数ステップで簡単に始められるのだとすぐに理解できますので、これを渡すようになってからはすごくスムーズになりました。

──そのような案内で、どのくらいの患者さんがオンライン診療を選びますか?

 

普段、お声かけをしているのは診察室で診ている患者さんの2割くらいでしょうか。そのうち半分以上の方がオンライン診療を試してくれています。

今まで再診で長い時間待っておられた患者さんのなかには「これでいいんですか」と新しい体験にびっくりされていた方もいらっしゃいました。

一度対面で診察していてオンライン診療を利用すると、対面診療でなくても良い場合はオンライン診療を希望する方が多い

 

──一度オンライン診療に切り替えたら、その後はずっとオンラインですか?

 

一度は対面で診察したことがあって、その後にオンラインにした方は、そのままオンラインを続けることが多いです。ただ、いつもと症状が違うと感じたときは、オンラインではなく対面診療を申し出てくれますね。実際にオンラインでは診にくい症状が出たときに来院してくださった方もいて、こちらとしても有難かったです。

 

逆に、初診からオンライン診療の方には、一度は対面診療をしておきたいので「状況が落ち着いたら一度来てください」とお願いしたり、遠方の方だと「近くの医院に行ってみてください」と促したりすることが多いです。ですから、初診からずっとオンラインだけで続いている方というのは少ないですね。

 

──ここまでオンライン診療の利点を中心にお伺いしてきましたが、欠点はあるでしょうか?

 

やはり、触診や検査、処置など、オンライン診療では実施できないことは多々あります。

視診についても、対面診療と比較すると劣ります。例えば、病変をスマホで映してもらおうとしても、カメラの位置やピントが合わなくて、うまく見えないことがあります。私は責任を持って診断しないといけないので、ちょっとオンラインでは難しいと言わざるを得ないときもあり、申し訳ないという気持ちになります。

 

また、皮膚科なので「水虫をオンラインで診てほしい」という依頼がよく来ます。白癬を確定診断するには検体を採取して鏡検する必要があるのですが、多くの患者さんはそれを知らないのです。こういう場合にオンライン診療の難しさを感じることがあります。

初診でも再診でも、カメラ越しなので把握しづらい点もあると診察の最初に丁寧に説明

 

──そういうときは、どのように対応されるのですか?

 

「本当は検査をした方がよいけれど、受診ができない場合は、薬局で売っているOTC薬を試してみてください。それでダメだったら近くの皮膚科を受診してください」と案内しています。

 

そもそもオンライン診療の最初に、初診でも再診でも全員に「カメラ越しなのでわからないことがあります」と必ず伝えることにしています。そうすると、オンライン診療で診察が難しい場合は病院に行かなければならないんだ、と理解してもらえます。

 

──オンライン診療と対面での通常診療を両立するために、どのような工夫をされていますか?

 

クリニックは最初と最後の時間帯に患者さんが増えるんです。その時間帯にオンライン診療も入ってくると来院した患者さんをお待たせしてしまうので、診療時間の最初と最後から30分から1時間くらい間隔を空けて、中盤の時間帯にオンライン診療の予約を入れるようにしています。現状はこのような対応で診察できています。

LINEドクターの利点は、患者さんが新たなアプリインストール不要な点と、いつも使っているという安心感

 

──岡田先生は2年ほど前からオンライン診療を始めていたとのこと。LINEドクターを使う前に別のシステムをお使いだったのでしょうか。

 

そうですね。当初は他社のオンライン診療システムを使っていました。そこから、クリニック専用のLINEアカウントを持つようになって、かかりつけの患者さんを対象にLINE上で再診などを行うようになりました。その流れでLINEドクターに移行した形です。

 

もともとLINEを使ってオンライン診療をやっていたので、LINEドクターは導入しやすかったですね。他社のシステムですと患者さんが新たにアプリをインストールする必要があるなどのハードルがあり、そのためにオンライン診療を諦めてしまう患者さんがいました。LINEならほとんどの方がすでにインストールしていますので、準備の手間が省けますし、使い慣れているかなと思いました。

 

LINEは、もう社会のインフラになっているような感じがありますよね。他のアプリを新たに入れたりするのには抵抗があるかもしれませんが、LINEなら信頼や安心感も得られやすいかなと思います。

 

──他のオンライン診療システムと比較して、LINEドクターは導入しやすいという点以外にも利点はありますか?

 

事務手続きや決済がスムーズになりました。患者さんの主訴や処方箋を送る住所などの情報が予約の段階で送信されてくるので、こちらから聞いたり入力したりする手間が省けています。一元的に管理できて、事務スタッフも同じ画面を見られるので、助かっています。

オンライン診療は、患者さんから信頼を得るための手段

売上寄与よりも集患への影響が大きい

 

──最後に、LINEドクターの導入を検討している先生方へアドバイスをお願いします。

 

オンライン診療の導入は多くの先生方が思っているよりも簡単だと思います。オンライン診療システムのなかでもLINEドクターは医療機関側にとっても患者さん側にとっても導入のハードルが非常に低く、特別な知識はまったく必要ありません。もちろん、オンラインでの診療がしやすいかどうかは各々の先生によって異なると思いますので、まずは1回試してみてはいかがでしょうか。

 

残念ながら、現状ではオンライン診療の診療報酬は低いので、わざわざお金をかけて導入しなくてもいいのかなとも思います。オンライン診療は医療機関の売上アップにつながるということよりは、認知を広げて集患につながる方法の一つと捉えています。

 

また、患者さん側からすると、オンライン診療など新しいものを積極的に取り入れている医療機関だという印象を持ってもらえますし、それなら薬や治療の知識をきちんとアップデートしている医師がいるのではないかと思ってもらえるのではないかと期待しています。その意味で、オンライン診療の導入は患者さんから信頼を得るための一つの有力な方法であると言えるかもしれません。

 

──豊富な経験に基づくアドバイスをいただき、ありがとうございました。LINEドクターも活用しながら、さまざまな患者さんの悩みに寄り添うクリニックとしてご活躍されることを期待しております。

ここクリニック

神奈川県横浜市港北区箕輪町2丁目7番42号

プラウドシティ日吉 レジデンスⅡ ソコラ日吉2階

TEL:045₋561₋1100

https://koko-clinic.com/