DATE:2021.04.22

新たな患者さんとつながるチャンネルを増やせる|天沼きたがわ内科

 

開業して約半年でオンライン診療を導入した、天沼きたがわ内科(東京都杉並区)。北川尚之院長は「患者さんとつながるチャンネルを増やしたい」と考え、患者側の導入ハードルが低いLINEドクターを選択。無理のない範囲でオンライン診療を始めたところ、これがきっかけで対面受診につながったケースもあるという。LINEドクター導入の理由や患者さんのニーズ、PR方法などについて北川院長に詳しく経験談を伺った。

天沼きたがわ内科 院長 北川尚之先生

診療科目:内科、脳神経内科、糖尿病

天沼きたがわ内科は2020年5月に東京都杉並区で開業した。院長の北川尚之先生は脳神経内科(神経難病、認知症など)を専門とし、日本内科学会総合内科専門医、日本神経学会専門医、日本認知症学会専門医、日本プライマリ・ケア学会認定医を取得している。診ている患者さんの6割ほどは脳神経疾患で、残りは一般的な内科疾患だ。ニーズに応じて訪問診療にも対応。開業から約半年後から、LINEドクターを用いたオンライン診療も提供している。

患者さんとつながるチャンネルは多いほど良い

専門分野の診療や、健康診断結果の相談までニーズは多種多様​

 

──天沼きたがわ内科でオンライン診療を導入した理由を教えてください。

 

まず、単純に私が「新しい物好き」ということですね(笑)。

脳神経疾患の患者さんのなかには通院が難しい方がいらっしゃいますし、気軽に相談できる専門の医師が近所にいなくて、オンライン診療でも専門の医師に話を聞いてみたいというニーズがあるようです。患者さんには多種多様なニーズがありますから、来院しての対面受診、訪問診療あるいはオンライン診療と、つながるチャンネルはなるべく多く用意しておく方が良いのではないでしょうか。こう考えて、2020年12月にLINEドクターを用いたオンライン診療を導入しました。

 

──これまでにLINEドクターでのオンライン診療を実施した患者さんのニーズはどのようなものだったのでしょうか?

 

オンライン診療をした患者さんのニーズの多くは、血圧が高い、咳が止まらないので診てほしい、薬が欲しいといったものでした。また、健康診断で異常を指摘され、病院に行くべきかどうか意見を聞きたいという相談もありました。健診結果には細かい説明がありませんので、実際に病院へ行かずとも医師の意見を聞いてみたいというニーズは意外とありそうだなと感じました。

年齢はやはり若い人が多く、ほとんどが初診の方です。LINEドクターを通じて新たな患者さんとつながることができ、そのうち数人はオンライン診療後に通院することになりました。また、以前に来院された方が、別の症状の相談のためにオンライン診療を使われたこともあります。神経難病で当院にかかっている高齢者が、お孫さんに手伝ってもらってオンライン診療を受けられたこともありました。

一方で、オンライン診療に至らなかったケースもいくつか経験しています。薬剤の長期処方を期待しておられた方は、診療をキャンセルされたり、対面診療に切り替えたりしました。また、遠方にお住まいの方で、専門外の訴えだったこともあり、こちらからお断りさせていただいたこともあります。

 

──訪問診療の代わりにオンライン診療を使ったことはありますか?

 

訪問診療をしている患者さんから血尿が出たとか、便秘がひどいといった連絡を受けることがあります。その場合は、わざわざオンライン診療を予約いただいて別途対応するよりは、電話再診とした方が手っ取り早いです。緊急性が高いようなら訪問しますし。現状では、診療報酬の面でもオンライン診療を選びにくくなっていると思います。今後は状況によっては訪問診療の代わりとなり得るかもしれません。

電話による診療よりもオンライン診療が良い点は「患者さんの顔が見えること」

 

──北川先生にとって、オンライン診療のメリットとは何でしょうか?

 

患者さんの顔が見えることです。顔を見れば相手の人となりが分かりますので。初診から顔が見えない電話だと、やっぱり怖いですね。ただ、同じ生活習慣病の薬をずっと継続しているような人なら、電話でも問題ないと思います。

オンライン診療に合う病気と合わない病気があるのではないでしょうか。例えば、発熱への対応はオンラインでは限界があり、対面診療が必要になることが多いと思います。

一方、てんかんや精神疾患などはオンライン診療が合っていると思います。てんかんは初診の人は厳しいですが、再診なら良いと思います。てんかんの専門医は神経内科医のなかでも輪をかけて少ない存在で、東京都内でもなかなか見つからないですよね。そういった専門分野に対応できる医療機関は近所にないことがほとんどでしょうから、オンライン診療でつながる意義は大きいのではないでしょうか。

やはり患者さんにとっても医療機関にとっても、より多くのチャンネルがあった方が良いと思います。

LINEドクターでマイペースにオンライン診療をスタート

思ったよりも事前準備は不要!

 

──北川先生がLINEドクターを選んだ理由を教えてください。

 

開業時に選んだ電子カルテはデジカル(M3 Digikar)でした。開業後、少し落ち着いてきたところでLINEドクターを知り、申し込みました。

 

──LINEドクター導入に伴い、院内体制などの準備はどうされましたか?

 

厚生労働省が推奨しているオンライン診療研修(※1)以外には、特に準備したことはないです。LINEドクターの導入は簡単で、これといった準備は必要ないと思います。最初の申込時に少し設定が必要ですが、たいした手間ではありませんでした。設備も自前の機器で十分に対応できています。

 

※1:オンライン診療及び4月10日付け事務連絡に基づく電話や情報通信機器を用いた診療を実施する医師は、可能な限り速やかに当該研修(https://telemed-training.jp/entry)を受講するよう努めること、遅くとも令和3年3月末までには受講することとされています。4月以降の研修に関しては、直接厚生労働省へお問い合わせください。https://www.mhlw.go.jp/content/000667692.pdf

 

 

──LINEドクター導入に関して、スタッフにはどのように説明されましたか?

 

実は「やって覚えてね」という風に始めたので、最初は不評を買ってしまったんです(苦笑)。新しいものに対する不安からだと思います。実際にはほとんどトラブルなく運営できています。

LINEドクターに関しては、何度も事前のシミュレーションをしないといけないとか、座学で話をしないといけないということはありません。すぐに覚えられるような簡単なシステムなので、1回くらいテスト診療して説明すれば十分だと思います。

ちなみに当院のオンライン診療の流れとしては、私が予約状況を確認しています。予約があったら事務スタッフがログインしてカルテをつくってくれます。予約時間になったら私が接続して患者さんとお話しし、領収書や明細書の作成までしています。その後、事務スタッフが処方箋や明細書などを郵送するという分担にしています。

オンライン診療の予約枠は、オフラインの診療予約が落ち着く時間帯を選定

自社HPでしっかり告知し対応できる範囲で始めてみることが大事

 

──通常の診療とオンライン診療とで、時間などは分けているのでしょうか?

 

午前と午後で1枠ずつオンライン診療の時間を設けています。来院者が少ない時間帯(診療の開始直後や終了直前ではない中間の時間帯)に設定しています。今のところはこの程度にしておいて、マイペースに進めていこうと思っています。今後慣れてきたら枠を増やすことを検討します。

 

──患者さんへはどのようにオンライン診療のPRをされていますか?

 

当院のホームページ上で、オンライン診療に対応していることをPRしています。おそらく患者さんはLINEドクターの中で近くの医院で探したか、当院のホームページを見てアクセスしたのではないでしょうか。

また、入口付近に当院のパンフレットを設置しておりまして、それと一緒にLINEドクターのパンフレットを挟んで置いています。

オンライン診療をしたことによって、今までと異なる患者さんとつながることができる

──LINEドクターを導入して良かったことと、今後期待することを率直にお聞かせください。

 

良かったことは、オンライン診療をきっかけに新患の来院につながったことですね。また、以前に遠方から受診された方が、私に相談したいとオンライン診療を使ってくれたのも嬉しかったです。このように、受診のチャンネルが広がったことを評価しています。

一方で課題に感じていることは、まだオンライン診療の制限が厳しく、自由度が低いことです。この規制が少しずつでも緩和されないと、患者さんにとっても医師にとっても本来得られるはずのメリットが得られないのではないかと感じています。今後オンライン診療を利用する医師が多くなれば、少しずつ変わっていくかもしれないと期待しています。

──最後に、LINEドクターの導入を検討している先生方へアドバイスをお願いします。

 

LINEドクターは導入コストがまったくかかりませんし、手続きも難しくないです。気軽にお試し感覚で始めてみてはどうかと思います。オンライン診療の予約枠を絞れば振り回されることも防げますし、できる範囲からスタートできます。

実際に私がオンライン診療を導入して、今までなら当院に来なかったであろう患者さんとつながることができましたし、そのご縁で通院するようになった方もいらっしゃいます。LINEドクター導入で得をすることはあっても、損はしないと思います。

オンライン診療は、患者さんの多様なニーズに応えるための方法の一つとして有効です。将来的にも、オンライン診療が廃れていくことはなく、時間はかかっても少しずつ拡大していくはずです。オンライン診療は対面診療とは少し勝手が異なる点もありますが、すぐに慣れます。興味がある先生方はぜひ今から始められてはいかがでしょうか。

 

──貴重な体験談をありがとうございました。今後もLINEドクターをご活用くだされば幸いです。

天沼きたがわ内科

東京都杉並区下井草1-32-5北誠ビル1F

TEL:03-3394-1401

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