DATE:2021.05.27

オフィス街の内科・小児科クリニックが模索する、新しい診療方法|藤田クリニック

 

東京・青山。オフィス街で内科や小児科の診療を提供している藤田クリニックでは、2020年からオンライン診療を開始した。リモートワークで通勤がなくなった再診患者さんなどを中心にオンライン診療を提供し、2021年1月からはLINEドクターを導入した。都心部の医療をさまざまな立場から支えている院長の藤田耕一郎先生に、オンライン診療の実際や今後の可能性などについて伺った。

医療法人社団松柏会 藤田クリニック 藤田耕一郎 院長

診療科目:内科、小児科、胃腸科、肛門科

藤田クリニックは2000年に開設された内科・小児科の診療所。東京都港区の青山通りに面し、青山、外苑前のオフィス街を中心とした地域医療に取り組んでいる。標榜している内科、小児科、胃腸科、肛門科はもちろん、在宅医療や健診事業、産業医などの活動に加え、港区医師会の会長も務めている。患者さんが困ったときに「そうだ、藤田クリニックに聞いてみよう」と頼られる存在であることをモットーとしており、現在では患者さんの働き方の変化に対応し、LINEドクターを用いたオンライン診療を提供している。

リモートワークで通院できなくなった患者をオンラインで診療

 

──藤田クリニックがオンライン診療を始めたきっかけを教えてください。

 

2020年4月に、オンライン診療を試験的に実施してみようと、ホームページに案内を出してみたのが最初です。一体どの程度の反応があるのかと思っていたら、20代の会社員の方から申し込みがありました。その方は職場が青山、すなわちクリニックの近隣にあるのですが、自宅でのリモートワークになってしまって通院の機会がなくなったのでオンラインで診療したいとのことでした。

 

同様に、新型コロナウイルス感染症の影響で通勤などの機会が減り、通院しにくくなったためにオンライン診療を検討される方は他にもいます。通院のためだけにわざわざ電車に乗ってくる手間が省けるわけですから、非常に良いことだと思います。

 

また、来院すると感染が不安だということで、お子さんをオンラインで診てほしいという申し出も複数ありました。こちらとしては、来院できるのであれば、来てもらった方が診療しやすいのは確かです。しかし、さまざまな理由で来院が難しそうな方にはオンライン診療をお勧めしています。

 

──オンライン診療のシステムは何を使っていたのですか?

 

当初はオンライン会議システムを使っていました。お試し感覚でオンライン診療を始めていますから、最低限のテレビ電話の機能があればいいだろうと。オンライン診療自体は簡単に始められましたが、保険証の確認や支払いは別に行わなければいけないので手間がかかりましたね。

 

その後、LINEドクターの存在を知りました。LINEはすでに広く普及していて、患者さんが新たにアプリをインストールする必要がほとんどないのが利点だと思い、2021年1月からLINEドクターの利用を開始しました。どれくらいの患者さんがオンライン診療を使ってくれるか分からない状態で高額なシステムを導入するのは、経営面から難しい部分があります。そういった側面も含めて導入ハードルが低いLINEドクターを選びました。

LINEドクターで花粉症、禁煙、内痔核を診療

 

──実際にLINEドクターでは、どんな疾患の診療をご経験されましたか?

 

現在は特例期間にて疾患の制限が緩和されているため、これまでに花粉症、禁煙、内痔核の診察をLINEドクターで実施しました。患者さんはいずれも当院にかかったことのある方で、ホームページをご覧になって申し込まれたようです。

 

花粉症は時期が限定されていますし、治療方針が確立されている方にはオンライン診療が向いていますよね。患者さんもある程度は自分の状態が分かっているので、今後もオンライン診療が活用されていくのではないかと思います。

 

──禁煙治療もオンライン診療が適しているように思うのですが、いかがでしょうか?

 

禁煙治療はモチベーションの維持が一番重要です。そのため、オンライン診療でも禁煙への意気込みを画面上で確認しながら診療を進めてしています。ただ、対面の問診と違って、返答の微妙な間合いや顔色などから患者さんの本音を把握するのが難しく、会話が一辺倒になりがちなので気をつけています。

 

禁煙治療はうまくいっていると途中で通院を止めてしまい、2回目、3回目と繰り返す方が多いんです。通院の必要がなく継続しやすいオンライン診療は選択肢の一つになると思います。

 

※LINEドクターは、保険適用される禁煙治療にもご利用いただけます。

 

──肛門科もオンラインで診療できるのですね。

 

コロナ禍の特例期間なのでやむをえずといったところもありますが、出血や排便の状態などを聞き取って、調子が良いか悪いかを判断しています。もちろん、対面でしか診られない部分もあるので3ヶ月に一度は来院してもらっています。

 

在宅医療の場にオンライン診療の可能性が秘められている

 

──藤田先生は産業医もされていますが、社員との面談などをオンラインで行うことはありますか?

 

新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの会社でリモートワークが導入されていますよね。その一環として、産業医として出席する安全衛生委員会などの会議がオンラインで行われるようになりました。また、メンタルヘルスの理由で会社に来るのが難しい方がいまして、その方との産業医面談をオンラインで行ったことがあります。

 

──オンライン診療は、どのような可能性を秘めているでしょうか?

 

私がオンライン診療の可能性を感じているのは在宅医療です。これまでは患者さんの具合が悪くなったときは電話再診で対応していたのですが、それがビデオ通話になると得られる情報量が多くなるので、有用です。看護師が訪問しているときにつないでもらって、顔を見ながら問診できれば、オンライン診療のレベルがさらに上げられると思います。

 

訪問看護師やデイサービス、ショートステイなどを利用されている要介護者でも、通院してくる方は結構いらっしゃるんです。そういう方が今後、家族や介護者の方のサポートを受けながらオンライン診療を使うようになるといいのではないでしょうか。

時代の流れについていく、新しい診察方法に慣れていく

 

──改めてオンライン診療の意義について、藤田先生のお考えを教えてください。

 

まずは感染症が流行っている時期に、病院の待合室で他の患者さんからうつされる心配がないことです。今は発熱外来のように発熱患者さんと他の患者さんが出会わないように工夫して診ることもできますが、心配な方にはオンライン診療が良いのではないでしょうか。

 

あとは「好むと好まざるにかかわらず、時代の流れについていかないといけない」という思いがあります。電話再診があるからいいじゃないか、ということではなく、リアルタイムで動画が見られてより多くの情報が得られるツールがあるなら、それは取り入れていくべきだと考えます。

 

思えば、以前からテレビ会議システムそのものはありましたが、コロナ禍で一気に定着しましたよね。この流れが今後も続くかどうかは分かりませんが、診療についても新しいものを試さないといけない時期に来ているのではないでしょうか。医師として新しい診察方法に慣れていく必要があると感じています。

 

──いま、オンライン診療やLINEドクターの導入をお考えの先生がいるとしたら、どのようなアドバイスをされますか?

 

やっぱり、なんでもチャレンジはしてみた方がいいですよ。オンライン診療をすることによって出会う患者さんもいるはずですし、新しい関係性ができてくるところもある。診療の幅を広げるという点では良いのではないかと思いますね。

 

──ありがとうございました。これからもLINEドクターを活用して、さまざまなチャレンジをしていただければ幸いです。

医療法人社団松柏会 藤田クリニック

東京都港区南青山2-22-19 アドバンテック南青山ビル7階

TEL:03-5772-7381

http://www.fujita-clinic.jp/