DATE:2021.06.28

心療内科とLINEドクターの相性はピカイチ|朝がおクリニック

 

2016年から心療内科・精神科のオンライン診療を導入し、数多くの患者さんから好評を得ている、朝がおクリニック(東京都日野市)。多摩地域は医療過疎地域であり、不眠症などの治療ニーズは高いものの、アクセスのしにくさに課題があった。その解決法として選んだのは、オンライン診療、そしてLINEドクターだったという。導入の経緯や運用の工夫、心療内科・精神科領域での活用法などについて、院長の工藤吉尚先生とカウンセラーの鈴木さんに詳しくお話を伺った。

朝がおクリニック 院長 工藤吉尚 先生/カウンセラー 鈴木さん

診療科目(心療内科、精神科)

朝がおクリニックは2014年に開院し、多摩地域において睡眠障害を中心に心療内科・精神科診療を提供している。遠方からの受診者や忙しい会社員などの多様なニーズに応えるために、2016年からオンライン診療を導入した。診療所の入り口に置いてある看板には大きく「オンライン診療」と記載している。対面とオンラインを柔軟に使い分けながら、コロナうつ、コロナ不眠への対応や家族療法などを実施し、地域の精神医療を効率的に担っている。

心療内科・精神科へのアクセスを確保するために、オンライン診療を始めた 直近は、コロナうつやコロナ不眠症の患者が急増している

 

──2016年と早期からオンライン診療を始めた理由を教えてください。

 

工藤:

当院のある多摩地域は東京都下の医療過疎地帯です。そのなかで睡眠障害(不眠症)専門クリニックは希少なため、近隣はもとより、遠方から来院する患者さんが多く、高いニーズがあると考えています。しかし、さまざまな理由で当院に来ることができない、アクセスが難しい患者にどう対応するかが課題でした。一昨年の台風の時期は多摩川が氾濫し、安全な場所へ非難される患者さんが続出しました。向精神薬がないと不眠、うつが悪化してしまいます。そこで、防災インフラとして実績のあるLINEのオンライン診療を導入しました。これなら、どんな緊急時にも患者さんに対応できます。また、もともと心療内科・精神科を受診することに抵抗がある方もいらっしゃいます。そんな方々の負担も軽減できいていると感じています。

 

そこで、往診の代替としてオンライン診療を導入しました。これなら、時間や場所にとらわれずに対応できます。また、心療内科・精神科を受診することに抵抗がある方もいらっしゃいます。そんな方々の負担も軽減できていると感じています。

 

 

──実際に、どのような患者さんがオンライン診療を受けているのですか?

 

工藤:

当院の最寄り駅は豊田駅、つまりJR中央線の始発・終着駅です。いつも遅くまで仕事をしていて、地元に帰ってきた頃には診療所が閉まっているというような方が多くいらっしゃるのですが、オンライン診療であれば仕事のちょっとした休憩中に受診できると好評です。

 

また、この地域は子どもが多いことも特徴です。小さな子どもがいると、自分が受診したくても

子供を自宅に留守番させることが難しかったり、預け先がなかなか見つからなかったりと、すぐに来院できないという状況に置かれがちです。そんなときに気軽にアクセスできるオンライン診療を選んでいただいています。

 

そして2021年春以降はコロナうつ、コロナ不眠症、コロナ後遺症で苦しんでいる方のオンライン診療が激増しています。特にこれまで心療内科とは無縁だったような大学生の受診が増えています。おそらくコロナで家から出られず昼夜が逆転し、不眠やうつに陥ってしまったのだと思います。

 

コロナ対策ということでは、院内でのオンライン診療も実施しています。例えばコロナの後遺症で受診された方は、PCR検査では陰性であったとしても他の患者さんと同じ部屋では対応しにくいので、オンライン専用の部屋にご案内しています。その部屋と医師がいる部屋をオンラインでつないで診察するのです。

 

このように、個々の患者さんの状況に合わせて、対面とオンラインを柔軟に活用しています。

オンライン診療との相性は、心療内科はピカイチ

 

──貴院では数多くのオンライン診療を実施されているとのことですが、うまくいった秘訣は何でしょうか。

 

工藤:

心療内科であるというのが一番の理由だと思います。オンライン診療との相性の良さでは、他の科目と比較してもピカイチではないでしょうか。確かに当院でのオンライン診療の件数は多いかもしれませんが、心療内科におけるオンライン診療の件数は、直接検査を必要とする内科、婦人科や小児科などとは同質として比べられないと思います。私としては、現状の件数でも少ないと感じていて、コロナが続く限りはさらに増えていくと予想しています。

 

 

──オンライン診療と相性の良い心療内科の中でも、特に合っていると思われる方を教えてください。

 

工藤:

まずは送迎が必要なため、自分だけでは次回の診察の予約が決められず定期的な通院が難しい方ですね。症状の悪化で電車に乗ることに不安がある方などにもおすすめです。

 

睡眠薬や抗精神病薬など処方制限のある薬剤を処方されている方にもオンライン診療をおすすめしています。症状がある程度安定しているのに、頻繁に通院しなければならないのは負担であると思うからです。

 

鈴木:

特にコロナ禍においては、感染の不安があって来院の間隔が空いてしまいがちです。いつも同じ薬をもらうために雨でも来ないといけないような患者さんに、オンライン診療をおすすめするとすんなり導入してくれます。

 

工藤:

初診の問い合わせで最近増えているのが、引きこもりのように外出に抵抗感があって本人が来院するのが難しく、通院治療につなげるのが難しいケースです。そのような場合に、まずオンライン診療で医師と話してみることができるようになりました。2回目の診察からは、来院とオンライン診察をうまく組み合わせて治療を続けられているケースもあります。

 

さらに、家族療法にもオンライン診療が合っていると思います。来院して行うとなると、関係する家族全員が狭い診察室に入る必要があるため、かなり密になってしまうんです。オンライン診療であれば、家族の予定も合わせやすく、密も避けられますので、積極的に活用しています。家族全員がリラックスできる状態で話せるのもメリットに感じています。

 

より良い治療を効率的に提供するために、オンライン専門部署も立ち上げ体制を強化

 

──貴院ではオンライン診療を積極的に患者さんに勧めているということですが、具体的にどのようにアプローチされていますか?

 

工藤:

こちらからストレートに「オンラインにしてください」とお願いしています。最初は患者さんも戸惑われるんですけれども、ずっと当院で経験を積んできた診療形態ですし、最近ではLINEドクターだからという理由で受け入れてくださる方が増えています。

 

また、当院ではオンライン診療を導入するにあたって、ITリテラシーの高いスタッフにリーダーシップを取ってもらって「オンライン専門部署」を立ち上げており、システム構築や患者さんのサポートを行っています。

 

鈴木:

オンライン診療を検討している患者さんには、事前に担当者から診療の流れを詳しく説明します。LINEドクターの場合は分かりやすいパンフレットもあるので、それを一緒に見ながら行っています。すでにLINEを使っている方ならQRコードを読み取ればすぐにLINEドクターを使えるようになるので、その場で予約を取って帰られることが多いです。

 

LINEドクターは他のオンライン診療用のアプリに比べ、患者さんにしていただく作業が少なく、受付での案内もスムーズです。患者さんからの問い合わせも減りましたね。LINEのビデオ通話を普段から利用している方が多いのも、導入のスムーズさにつながっているように感じています。

 

また当院では、初回のオンライン診察前日までに電話連絡して、スマートフォンの設定や薬の受け取り方等を詳細に伝えています。この際、メリットよりもデメリット(3回目は対面が必須、初回は向精神薬の処方はできないことなど)を丁寧に伝え、患者の不安と診察当日の不手際を減らす努力をしています。

オンライン診療にすることで待ち時間のクレームも減り、スタッフの精神的な負荷も減っている

 

──数多くのオンライン診療と対面診療は、うまく両立させられるものでしょうか。

 

鈴木:

もともと対面診療は1人10分で枠を取っているんですけれども、オンライン診療だと5分くらいで終わる方が多いので、対面診療の間にオンライン診療が入っても問題なく進められています。たまに対面診療が長くなることがあるのですが、オンライン診療の浮いた時間で調整できます。

 

対面診療とオンライン診療の予約が詰まるということもありません。対面診療は診察時間の中でも早めの枠を希望される方が多く、オンライン診療は仕事の昼休みや退勤後の時間を希望される方が多いです。そこでオンラインの枠を遅めの時間に増やすことでバランスが取れています。

 

また、当院の待合室はあまり広くありません。対面診療の待ち時間が長くなると密になって圧迫感が出ますし、部屋全体の雰囲気が悪くなってストレスになります。オンライン診療の導入でこのようなことが減ったので、事務スタッフとしても良かったと思います。

 

工藤:

もともと心療内科は来院された患者さんを待合室で待たせることが多く、それは当院としても心苦しいことです。オンライン診療なら、診療を待つ患者さんは基本自宅にいて、待っている間に仕事や家事などができるので、予約時間のズレに関するクレームは少ないです。オンライン診療だと、患者さんだけでなく我々のストレスも減っていると感じます。

オンライン診療は、感染対策にもなるし、医師と患者さんの心理的な距離が縮まる機会にもなる

 

──オンライン診療を行う上で注意していることがあれば教えてください。

 

工藤:

表情は重要ですので、オンライン診療のときは高照度光療法器を流用して自分の顔を照らし、より「映える」ようにしています。また、対面診察のときより意識して身振り手振りを大きくして、伝わりやすくしています。

 

また、オンライン診療を経験してから、対面診療の際に患者さんをもっと観察するようになりました。対面診療だけの頃は、自然と患者さんの全体像を見ているのでそんなことは考えていなかったんですが、オンライン診療での限界を体感することで、かえって対面診療で得られる情報を意識するようになりました。患者さんの目の動き方から心理を読み取るNLP理論というものがあるのですが、それを駆使せざるをえない状況になったので、結果として医師としての実力も上がりました。 

 

 

──最後にLINEドクターの導入を検討している先生へのアドバイスをお願いします。

 

工藤:

当院がオンライン診療を行っていることについて、皆さん非常に喜ばれています。医師と患者さんの心理的な距離も縮まるように感じています。オンライン診療は感染対策をしつつ診療を続けていく上で非常に有効ですし、患者さんにも「しっかり感染対策を実施しているクリニック」という好印象をもっていただいているのではないでしょうか。

 

コロナ禍がなくとも、もともと心情として、病院に行きたいと思う人は少ないと思います。患者さんにいかに医療を届けるかという課題に対して、医師が往診に出かけるという方法がありますが、それと同じような感覚でオンライン診療を活用してはいかがでしょうか。

 

 

──ありがとうございました。心療内科・精神科の診療を必要としている患者さんのために、今後もLINEドクターをご活用くだされば幸いです。

朝がおクリニック
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