DATE:2023.04.14

 

4月は心機一転、新生活を始める時期――。仕事や学業などで環境が変わる方も、そうでない方も、何か新しいことにチャレンジしたくなりますよね。もし、あなたがタバコを吸うなら、この機会に思い切って禁煙をしてみませんか? 喫煙は最大の死亡リスクですし、副流煙(主流煙よりも有害物質を多く含む)による受動喫煙で周囲の人々の健康も害してしまいます。

参考文献:Ikeda N, et al: PLoS Med. 2012; 9: e1001160. 

 

 

2020年に改正健康増進法が全面施行 されて敷地内・屋内禁煙が広まり、喫煙者の肩身はどんどん狭くなってきています。そこで心機一転! 今は禁煙治療をオンラインで気軽にできるようになっています。一人で禁煙すると失敗しやすいですが、医療者の支援を受けながらだと禁煙治療の成功率は7~8割といわれてに高まることが知られています。タバコを止めて、新しい自分になりましょう!

参考文献:中央社会保険医療協議会: 診療報酬改定結果検証に係る特別調査(平成21年度調査)ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査報告書,p43

 

なぜタバコをやめられない?

 

 

やめたくてもやめられない、禁煙習慣

 

「これまでに何回も禁煙しているから、禁煙は得意だよ」なんていう冗談があるくらい、禁煙習慣を止めるのは難しいことです。2019年に厚生労働省が行った調査によると、習慣的に喫煙している人のうちタバコを止めたいと思っている人は3~4人に1人(男性24.6%、女性30.9%)います。こんなに禁煙したいと思っている人が多いのにも関わらず、喫煙者の割合は2010年の19.5%から2019年の16.7%と少し減っているだけです。

参考文献:厚生労働省:令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要, p30-32, 2020

 

 

これはタバコを止めたいと思っていても、本当に止められる人が少ないからではないでしょうか。実際に、自力で禁煙にチャレンジしたときの禁煙成功率は3~5%だったという報告があります。

参考文献:JR Hughes,et al:Addiction 2004 Jan;99(1):29-38.

 

 

自分1人で禁煙を成功させられるのは20人に1人ほどしかいない計算になりますから、想像以上に難しいことのようです。「今度こそ絶対にタバコを止める!」と決意したのに、つい吸ってしまう理由は、あなたの意志が弱いからではなく、「ニコチン依存症」という治療が必要な病気だからかもしれません。

 

 

 

ニコチン依存症とは?

 

タバコに含まれる有害物質「ニコチン」には依存性があります。ニコチンには脳内のドーパミンを介する脳内報酬系に作用することで快感や満足感を覚えさせる作用があります。定期的にタバコを吸ってニコチンを摂取すると、脳内にニコチンがあることが当たり前になって、ニコチンがないとうまく脳が働けなくなります。また、ニコチンは一度摂取しても体内からすぐに消えてしまうので、ニコチン切れを感じてまたすぐに吸いたくなってしまいます。これが依存を引き起こす理由です。

参考文献:日本循環器学会 禁煙推進委員会:タバコの依存症:(1)ニコチン依存.(外部サイトへ)

 

 

ニコチンはヘロイン、コカインに次ぐ依存性があり、アルコールや覚醒剤、麻薬よりも依存性が高いことが報告されています。

参考文献:日本禁煙学会:タバコは薬物である.2018(外部サイトへ)

 

 

ですから、ニコチン依存症になってしまうと、喫煙を止めることが非常に難しくなるのです。ニコチン依存症になっているかどうかを判定できるTDSニコチン依存度テスト(外部サイトへ)がありますので、タバコを吸っている人は一度試してみてください

※このテストで5点以上だった人は、ニコチン依存症の可能性があります。禁煙したくても自力では成功しにくい状態かもしれないので、医療者による禁煙治療を受けてみることをおすすめします。

 

禁煙治療って?

 

 

禁煙治療ってどんなもの?

 

禁煙治療では、医療者による薬剤処方とカウンセリングの両輪で禁煙をサポートします。禁煙ではニコチンの離脱症状が大きな敵となりますが、禁煙補助薬をうまく用いることで比較的楽に、無理なく禁煙することができます。実際にニコチンパッチを用いると禁煙率が約1.6倍高まることや、飲み薬(バレニクリン)を用いると離脱症状だけでなく、再喫煙時の満足感も減らせて、禁煙率が約2.2倍高まることが報告されています。

参考文献:日本医師会:あなたのため、そばにいる人のため 禁煙は愛 2021年版, p18, 2021(外部サイトへ)


 

カウンセリングでは、禁煙のコツ(たばこをつい吸いたくなる状況の予測や対処法など)を教えてもらったり、禁煙への不安を聴いてもらったりして、一人ひとりに応じたアドバイスがもらえます。ニコチン依存はこころの依存でもありますから、心理療法を併用するのが大切なのです。禁煙治療を完了した人の4週間禁煙成功率は7~8割と言われています。

参考文献:中央社会保険医療協議会: 診療報酬改定結果検証に係る特別調査(平成21年度調査)ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査報告書,p43

 

 

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禁煙治療には、2006年より健康保険が適用されるようになり、あまりお金をかけずに受けられるようになりました。健康保険を使うと、1日1箱喫煙する場合のタバコ代よりも治療費の方が安くなることが多いです。2020年度からは加熱式たばこを吸っている人も健康保険による禁煙治療の対象となりました。
参考文献:厚生労働省:TDSニコチン依存度テスト. e-ヘルスネット(外部サイトへ)

 

※以下の要件をすべて満たした方のみ健康保険が適用されます
・ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で5点以上、ニコチン依存症と診断された方
・35歳以上の場合、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の方
・直ちに禁煙することを希望されている方
・「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意された方

 

 

一般的に、健康保険を使って禁煙治療を行う場合は12週間のプログラムとなり、下図のように12週間の間に5回、医療機関に通う必要があります。
参考文献:中村正和,谷口千枝:禁煙治療ってどんなもの? e-ヘルスネット(外部サイトへ)

しかし、仕事や学業などで忙しい人が3か月のうち5回も病院に通うのは大変なので、オンライン診療による禁煙治療ができるようになっています。
従来は1回目と5回目の診療は対面で、2~4回目はオンライン診療で禁煙治療を行うことができましたが、現在は場合によっては1~5回目までのすべてをオンライン診療で行ってよいことになりました。
参考文献:中村正和,谷口千枝:禁煙治療ってどんなもの? e-ヘルスネット(外部サイトへ)