



東京都新宿区にある四谷内科・内視鏡クリニックは、2022年に消化器内科(内視鏡)と糖尿病内科の専門医の2名体制で新規開業した。「予防医学を世の中に広め、健康寿命を伸ばし社会に貢献する」ことを理念に掲げ、対面診療とオンライン診療をうまく組み合わせながら、忙しい人でも気軽に医療につながるように様々な工夫を凝らしている。今回は胃カメラや大腸カメラなどで検査や治療を行う消化器内科(内視鏡)を専門としている院長・高木謙太郎先生にお話を伺った。
※高木先生にインタビューを実施し、頂いたコメントを弊社にて一部編集して掲載しています。
早期発見して、トップレベルの医師につなげる
──まず、先生が医師になった理由やきっかけを教えてください。
父や祖父、親戚の多くが医師だったので、自然と医師を志しました。予防医療に力を入れたいと思ったときに、東京都心の医療は日本で最先端で、人々の予防医療の意識も高く、情報発信力も強いので2022年に都心部での開業を決めました。
──先生が予防医学に着目された理由は?
大病院や救命救急センターで働いていたときに、病気が手遅れになってから受診する人が多くて、もう少し早く検査を受けていたら…と思うことが多々あったからです。しかし、一般的に胃・大腸カメラは「苦しい」というイメージが強くて、心理的なハードルが高いですよね。だから当院では、質が高くて苦しくない検査を提供し、多くの人に「これならもっと早く受けたかった」「周囲の人に広めたい」という流れを作りたいと思っています。
──医師夫婦で、夫(院長)は消化器内科・内視鏡を専門とし、妻(副院長)は糖尿病や甲状腺疾患を専門としているそうですね。
実は、消化器内科と糖尿病内科は深いつながりがあります。例えば、糖尿病の人はがんになりやすいので、胃・大腸カメラを定期的に受けてほしいのです。予防医学の観点からもこの2診療科は親和性が高いので、夫婦で一緒にやろうと思いました。
──先生の診療における価値観やポリシーを教えてください。
患者さんに合わせてオーダーメイドな医療を提供したいです。皆さん診察時に緊張されていて、診察時間内に本音を言えないことが多いのではないでしょうか。ですから、患者さんにリラックスしていただいて、本音や苦しみ、悩みごとを引き出すことが大切だと思っています。忙しいときは難しいこともありますが、時間があるときにじっくりお話を聞いて、患者さんとよい関係性を築いていきたいです。


大腸カメラの通院が3回から1回に
──LINEドクターを導入されたきっかけや理由を教えてください。
当院は主にウェブで集患しているので、オンライン診療は親和性が高いと思いました。そこでオンライン診療のシステムを何社か入れたのですが、認知度が低くてほとんど使われませんでした。そこで大きなプラットフォームを持っているLINEドクターを導入したところ、利用者がぐっと増え、今では当院のオンライン診療の6~7割はLINEドクター経由です。LINEドクターは患者さんにとって分かりやすいメニューがあり、クリニックを選ぶ手間を省いて自動でマッチングさせ、しかも薬局に行かなくても薬が配送されるという仕組みがあるので、すごいなと思います。オンライン診療のために別のアプリを入れる手間もないですし、患者さんにとっても医療機関にとっても助かる仕組みだと思います。
──貴院でオンライン診療を受ける方は、どのような病気が多いですか?
現在(3月)最も多いのは花粉症ですが、それを除くと感染症や発熱などが多いです。また、実はまだ始めたばかりなのですが、オンライン診療を活用した「スマート大腸カメラ」というサービスを始めています。通常、大腸カメラをするときは、①事前診察、②検査、③結果報告の3回来院いただく必要があるのですが、「スマート大腸カメラ」では、このうち①事前診察と③結果報告の2回をオンライン診療で行い、来院いただくのは検査日の1回のみです。
ビジネスマンが平日に3回続けて受診するのはかなり大変ですから、こうすれば内視鏡検査に対する心理的なハードルや時間的な負担を下げられます。また、海外を含む遠方から来る方々にも便利です。このような形がもっと広まって、全国的に内視鏡に対する敷居が下がればいいと思っています。
──「スマート大腸カメラ」の具体的な流れについて教えてください。
まずはオンライン診療で大腸カメラを受けたい理由や症状などを伺って、検査のための食事制限や下剤の飲み方を説明します。そして、検査日までに下剤を自宅に郵送しますので、検査の当日に飲んでいただいてから来院してもらい、大腸カメラを受けていただきます。なお、自宅で下剤を飲むのが心配な方は、検査の4時間前に当院に来ていただければ大丈夫です。当院の内視鏡検査は多くの場合、鎮静剤と睡眠薬を使って行うので、検査後は少しぼんやりしていて説明を覚えていないことが多いので、検査が終わったら帰っていただいて、約1週間後にまたオンライン診療の予約を入れてもらって、検査結果を説明しています。
──検査当日はどのくらいの時間がかかりますか?
クリニックに来てから出るまでに1時間半~2時間ぐらいかかります。ただし、大腸カメラは4時間くらい前から下剤を飲む必要があります。どこの病院でも大腸カメラは午後の時間帯に行うことが多いのですが、当院では忙しいビジネスマン向けに朝9時から検査ができて10時半に帰れる枠を用意しています。朝4時に起きて下剤を飲む必要があるので、安全を考えて、これまでに大腸カメラを受けたことがある方に限定しています。ちなみに、当院で使っている麻酔は1時間ほどで完全に体内から抜けるので、午前に検査して、昼から普通にお仕事ができる状態になると説明しています。
検査結果から処方までのタイムラグを発生させないためにも
──「スマート大腸カメラ」以外にもオンライン診療の活用法はありますか?
最近いいなと思っているのは、血液検査の結果をオンライン診療でお伝えし、タイムラグを発生させずに処方薬を変更するという活用法です。普通の医療機関だと、検査してから結果を説明して処方を調整するのに1か月ほどかかることがよくありますが、オンライン診療を活用すれば検査した数日後に適切な薬に変えられることがあります。
当院は60歳未満の患者さんが95%ほどを占め、オンライン診療との親和性はとても高いはずなのですが、5人にオンライン診療を勧めて、本当にオンラインにする人はまだ1人くらいしかいません。
もっと気楽にオンライン診療を活用していただきたいです。例えば、調子が悪い時、近くに医師の友だちがいたとしたら「この症状はどうしたらいい?」と聞きたくなりますよね。そういう感覚でオンライン診療を使っていただきたいです。医師にちょっとした相談をするために、仕事を半日休んで受診するのは大変ですから、そういうときにオンライン診療を使って健康相談できる環境があるというのはとても良いことだと思います。


我慢するよりはオンラインで相談を
──最後に、オンライン診療に向いていない症状を教えてください。
頭痛や腹痛、胸痛です。特にこれまでにはなかったのに初めて起こったもの、いつもと違うものというのは、脳出血などの重大な病気が隠れている可能性があるので、検査ができないオンライン診療では心もとないです。しかし、どこにもかからずに我慢してしまうよりかは、オンライン診療で医師に相談してもらいたいです。
もし、オンラインで話を聞いて「この人は絶対に受診した方がいい」と思う場合は、お住まいの地域の基幹病院(治療が可能な病院)に電話して予約を取り、紹介状を書いて、確実に受診していただくように手配します。実際に腹痛をオンラインで診た方が虫垂炎(盲腸)で、近くの病院に誘導して緊急手術を受けていただいた例もあります。仮に病院に行って検査をして心配がないことが分かったとしても、それは患者さん自身も安心できるので、意義があることだと思っています。









