



九段坂内科消化器内科クリニック院長の中尾圭介 先生は、医学博士としての豊富な経験を活かし、ホームドクターの立場から患者さんやその家族の生活の手助けをしたいと考えている。
ビジネス街に位置するクリニックであるため、忙しい人でも受診しやすいようにとオンライン診療を始めた。
今回はLINEドクターを用いたオンライン診療の実際と活用について聞いた。
※中尾先生にインタビューを実施し、頂いたコメントを弊社にて一部編集して掲載しています。
人と話をするのが好き、わかりやすく説明するのが得意
──中尾先生が医師になった理由を教えてください。
人助けできて社会に貢献できる仕事の中で、自分の特技や性格に最も合っていた職業が医師でした。
やり方が決まった仕事やゴールが見えている仕事よりは、日々新しい知識を勉強して取り入れて、自分の中で噛み砕いて人に説明するという仕事が向いていると思ったのです。
──消化器外科医としてキャリアを積まれていますが、クリニックを開業した理由は?
「患者さんと話すのが好きだった」ということに尽きます。
私は外科医として手術や術後管理をメインに行っていましたが、手術前後の患者さんに詳しく説明するという業務もありまして、私はそれが得意で好きだったんです。手術の技術習得が一通り終わった段階で、さらに手術の腕を磨く道を行くか、人と話をしながらよりよい治療法などをアドバイスする立場になるのかという大きな分岐点がありまして、私は後者を選びました。実はクリニックを開く前に訪問診療、すなわち自宅で余生を送るがんの末期の患者さんなどに寄り添う仕事を2〜3年経験しました。
──中尾先生の診療方針・ポリシーを教えてください。
患者さんの意見・希望をもっとも尊重し、納得できるまで説明することです。
患者さんの中には、服薬しないと命に関わるのに飲みたくないと言う方がいます。そのような方に私は頭ごなしに指示したり、無理やり飲ませることはせず、服薬しないことによるデメリットと服薬によるメリットを詳しく説明します。また、その状況に至った原因や心当たりを伺うと、不摂生な生活をしている方が多いので、それを改めることを提案します。薬を飲むか、もしくは飲まない代わりに生活改善の努力をしてもらうか、患者さんに選んでもらうという形を取ります。


相談しやすい雰囲気を作り、丁寧・親身にお話する
──貴院では2023年1月からLINEドクターによるオンライン診療を導入されました。
その理由やきっかけを教えてください。
当院はビジネス街にあるので、仕事で忙しくてもすぐに受診できるようにするための手段として、オンライン診療を導入しました。
これまでに対面診療で来ていた患者さんがオンライン診療に変わることは、思っていたよりも少なかったのですが、会社の転勤などで遠隔地に行った方とオンラインでつながっている例は何件かあります。むしろ、各地域から当院へオンライン受診してくれる方が増えました。
オンライン診療に来てくれる患者さんにも、より相談しやすい雰囲気づくりを心がけて丁寧かつ親身に話をするようにしています。こういった姿勢を評価してくださって、当院をリピートしてくれたら、とても嬉しいです。
医療の第一歩として、オンライン診療を活用
──中尾先生のご専門である消化器に関して、オンライン診療ではどのような相談が多いですか。
消化器疾患のご相談で多いのは、腹痛や下痢に関することです。
「こんな症状で困っています」と言ってくれれば、アドバイスをしたり、薬を出したりすることができます。
相談の第一歩としてはオンライン診療はとても良い仕組みです。
ただし、それ以降どうなるかはケースバイケースです。例えば途中で内視鏡検査や超音波検査、採血検査などをしなければならない状況になったら、オンライン診療では無理ですよね。消化器疾患に限らずほとんどの病気は対応できますが、それは検査なしで行けるところまでです。
──例えば下痢で困っている人がオンラインで受診したら、どのように診療が進んでいきますか?
まずは詳しく問診をしていきます。いつから症状があるのか、下痢以外の症状(吐き気、腹痛、血便、発熱など)はあるか、下痢で1日何回ぐらいトイレに行くのか。下痢をする前に食べた食事の中に、何か怪しいものはなかったか、もともとお腹を壊しやすい体質なのか、仕事や生活環境の変化などはないかを聞きます。
食事に何か心当たりがあるとか、家族にも症状があるような場合は、細菌やウイルス、寄生虫の感染による急性腸炎の可能性が高いと判断します。その場合はお腹を休める治療を提案します。具体的には食事を止めて、トイレになるべく行って、水分をしっかり摂ることです。また、下痢を止める治療をすると逆効果になることも説明します。
一方、感染による下痢ではなさそうな場合(下痢が1か月以上続いている、幼少期からストレスがかかるとお腹を下す、お腹は痛くないけれど延々と下痢だけしている等)は、これまでに一度も大腸内視鏡検査をしたことがなければ、それを受けることをまずは提案します。
感染ではない下痢でよくある病気は、ストレスや緊張によって下痢が続く過敏性腸症候群です。問診でこれが疑わしいと判断した場合は、腸内環境を整えたり、下痢止めやストレスを緩和する漢方を使ってみるという流れになると思います。いずれにせよ、様子を見て悪い状況が続くようなら再診するようお願いしています。
──もしオンライン診察中に対面診療が必要だと判断した場合は、どのような対応になりますか?
当院を受診してくださいと言うこともありますし、この薬で良くならなかったら必ずこの専門医にかかってくださいということもあります。健康診断の結果を見せていただいて、異常がひどい場合は当院ではなく、専門医に診てもらうことを提案することもあります。
お住まいが遠い場合は、かかりつけ医がいるか、近くに総合病院はあるかというような状況を聞いて、こうした方がいいですよとアドバイスしています。


手軽なオンライン診療で安心して話せる
──改めて、オンライン診察のメリットをお聞かせください。
やっぱりオンライン診療は手軽だと思います。待合室での待ち時間や通院の手間などを考えると、とても楽ですよね。当院は話をしやすい雰囲気づくりと、患者さんの話をしっかり聞くことを大切にしております。オンライン診療だと周りに他の患者さんはいませんし、医師と自分だけの空間で相談できるので、安心してお話いただけるのではないでしょうか。









