

DATE:2021.05.20
医師とスタッフのファインプレーで、毎日の外来とオンライン診療を両立|たかはし耳鼻科
たかはし耳鼻科ではオンライン診療を2015年から開始し、主にアレルギー性鼻炎(花粉症、通年性)やCPAP療法の患者さんが利用している。2021年2月よりLINEドクターを導入したところ、予約数は大きく増加したという。耳鼻科クリニックとして積み重ねてきたオンライン診療の経験から、その意義やメリット、患者さんの反応などについて、院長の高橋健太郎先生と看護師の熊谷亜希子さんに詳しく伺った。
※2022年8月2日追記 本取材でご協力いただきました、たかはし耳鼻科は、2022年8月24日(水)で閉院予定です。


たかはし耳鼻科 院長 高橋健太郎先生 / 看護師 熊谷亜希子さん
診療科目:耳鼻咽喉科
神奈川県茅ヶ崎市に隣接する寒川町には、オレンジを基調とした明るく清潔な院内で患者さんを温かく迎え入れている診療所、たかはし耳鼻科がある。「ていねい」「真剣」をモットーに掲げ、スタッフ全員で「なるべくお待たせしないこと」を心がけている。2015年からオンライン診療を開始し、試行錯誤して経験を積み重ねてきた。現在では毎日のように外来診療と並行してLINEドクターを使用したオンライン診療を提供している。
耳鼻科ならではのオンライン対応を実現するため、スタッフが工夫してタイミングを見計らう
──たかはし耳鼻科でオンライン診療を導入・運用するにあたり、院内の体制構築や工夫されている点を教えてください。
高橋:
オンライン診療は診察室ではなく院長室のパソコンで行っています。耳鼻科の場合、外来の診察が終わってからも薬の吸引などで診察室に患者さんが残っているんですよ。その状態のままオンライン診療を始めると、その内容が他の人に聞こえてしまうので、別室で対応しているんです。
つまり、診察室と院長室とを行ったり来たりすることになるわけです。その一方で当院は「待ち時間を一秒でも短くする」ことを大切にしておりまして、その両立を実現すべくスタッフの方々にご協力をいただいています。
熊谷:
例えば、10時にオンライン診療の予約が1件入っているとします。当院は基本的に予約制ですので、9時に何人、10時に何人というように外来の患者さんが来院されるなかで、オンライン診療をうまく差し込む必要があります。
当院ではオンライン診療の予約が入っている時間帯にタイマーを設定しています。タイマーが鳴ったら、高橋先生の診察スピードと事前に把握している患者さんの診察内容をもとに、この人の診察は3分くらいで終わるなとか、5分くらいかかりそうだなと予測して、外来とオンライン診療がうまく切り替わるタイミングを見計らって、先生に「はい!行ってください!」と院長室に移動してもらっています。
でも予想外に外来の診察時間が伸びてしまうときもありますので、そのときはオンライン診療の方に「ちょっと遅くなります」と伝えて待ってもらいます。この方法はスタッフ全員に周知しており、協力し合っています。


待ち時間を1秒でも短くするために、事前準備に力を注ぐ。患者さんにも協力を依頼
──オンライン診療のタイミングを調整する以外に工夫されていることはありますか?
熊谷:
できることは何でも事前に準備するようにしています。当院はオンライン診療の予約の段階から受診の目的などを記載するようホームページ上でお願いしていて、患者さんも協力的でかなり細かく書いてくださいます。それをもとに診察内容を予測し、診察前に処方薬までカルテに書いておきます。あとは実際の診察でそれを少し修正すれば済むようにしています。
というのも、請求処理をするときにタイムラグが発生するんですね。できるだけ患者さんを待たせずに、処方箋をすぐに送ってあげたいので事前に準備しているのです。また、診察でバタバタしていて薬局にFAXし忘れたりするといけないので、事前にすべて準備しています。こうして全体の工程がスムーズに進むように工夫しています。
高橋:
私だけではここまではできないですよね。看護師、事務系を含めたスタッフ全員でチームとなり、うまく回していくことでオンライン診療をスムーズに運用できています。事前に予測した診療内容も、今のところはほぼ当たっており、処方する薬の数が変わるくらいの微修正で済んでいます。
──ホームページ上でお願いしている事項について、患者さんはどのくらい守ってくれるのでしょうか?
高橋:
ほぼ守ってくれています。たまにホームページを全然読まないで予約して、受診目的の記載がないような方がいて、その場合はキャンセルしたことがあります。また、処方時に参考にする子どもの体重についても記載するよう、ホームページ上でかなり強調しているのですが、書いてくれなくて結局キャンセルになった事例があります。オンライン診療中に体重を計測するのを待っていると、かなりのタイムロスになってしまうんです。
──オンライン診療の患者さんとなかなか通話できなかったり、忘れたりされることはありましたか?
熊谷:
今までにそういったトラブルが起こったことはないです。オンライン診療が始まる直前に通話リクエストを送ることを事前にお知らせしていて、リクエストが来たらすぐに電話するようにお願いしています。現状では高橋先生がスタンバイできたら、患者さんから10〜20秒のうちに通話がかかってきています。


オンライン診療の意義は「待たない」「来院不要」「感染予防」に加え、リラックスして診察できること
──改めて、オンライン診療を実施する意義をお聞かせください。
高橋:
やはり「待たない」「病院に行かなくてもいい」ということに意義を感じています。そして今は「病気をもらわない」という感染予防の点も大きいですよね。患者さんも喜んでくれていると思います。一度オンライン診療を使ってみた人は、次回も使ってくれますので。
オンライン診療をする医師の立場から好ましく感じるのは、患者さんがご自宅でリラックスして診察を受けてくれていることです。病院と違ってお互いに緊張することなく、部屋着で素の顔が見られますし、ゆったりとしたペースで、いつもどおりの感じで診られるのが利点ですね。
──LINEドクターを導入して良かったと感じる点がありましたら教えてください。
高橋:
とにかく利用者数が格段に増えたことです。身近なアプリであるLINEですぐにできる、ということが大きいと思います。
熊谷:
LINEだと新たにインストールする手間が省けることが多いですし、手数料が無料で助かります。病院側としてもオンライン診療のシステムを一括化したので、経理上の管理もしやすくなりました。
高橋:
あとはLINEからのサポートが手厚くてありがたいですね。我々はシステムに詳しいわけではないので、サポートいただけると安心感があります。
──最後に、LINEドクターの導入を検討しているクリニックへアドバイスをお願いします。
熊谷:
LINEはサービス開始からまだ10年しか経っていないのに生活に密着しています。オンライン診療についても、LINEと同じようにあっという間に広がる可能性があるのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症の影響もありますし、10年後は「オンライン診療をしていない病院はない」という世界になるかもしれません。
高橋:
LINEドクターの導入は難しくないので、とりあえず始めてみたらいいと思います!
──豊富な経験談や工夫のヒントを教えてくださり、ありがとうございました。引き続きLINEドクターをご活用いただければ幸いです。