ここクリニック(皮膚科・アレルギー科/横浜市港北区)の院長である岡田里佳先生は、待ち時間の長い患者さんの負担を軽減するために、約4年前からLINEドクターを用いたオンライン診療を始めた。皮膚科の病気は目で診察するので、オンライン診療は相性がいいという。実際にアトピー性皮膚炎や蕁麻疹(じんましん)、多汗症などでどのようにオンライン診療が活用されているのか、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医でもある岡田院長に詳しく話を伺った。
※岡田先生にインタビューを実施し、頂いたコメントを弊社にて一部編集して掲載しています。
こんなお悩みをお持ちの方へ
オンライン診療は多くの皮膚疾患に対応できる
――先生は普段、LINEドクターでどんな病気を診ているのですか?
当院は皮膚科・アレルギー科を標榜しているので、受診される患者さんのほとんどは皮膚の病気で来られます。そのうち約1割の患者さんがLINEドクターで受診されます。オンライン診療で診ている病気としては、アトピー性皮膚炎や蕁麻疹、ニキビが多いですね。それに加えて、夏になると子どものあせもが増えてきます。
オンライン診療で対応できない皮膚の病気はほとんどありません。もちろん採血検査が必要な方もいますが、「いったんこの薬を試してみて、もし効かないようなら病院に来てください」という対応も可能なので、基本的にはオンライン診療で対応できる患者さんが多いです。
――皮膚の病気でオンライン診療を受ける際には、どのようなことに気を付けておけばいいでしょうか?
皮膚科の診察は見た目がとても大切なので、カメラでうまく患部が見られないと診察しづらいことがあります。暗すぎない/明るすぎない照明の場所で診療を受けていただくと助かります。
また、患部をあらかじめ撮影しておくのも良い方法です。患部がデリケートゾーンにあるとビデオ越しに見せづらいですし、蕁麻疹など時間が経つと消えてしまう症状もあります。子どもの場合は動いてしまってビデオで皮膚がうまく見えないことがありますので、こういった場合は写真があると助かります。
さらに、これまでに飲んでいた/飲んでいる薬やアレルギーについて教えていただく必要があります。お薬手帳があれば把握しやすいので、もしあればその場でビデオ越しに見せていただいてもいいですし、写真に撮って送っていただけるとスムーズに診療が進むと思います。
※LINEドクターでは問診を入力する際に患部写真の添付が可能です。
アトピー性皮膚炎のオンライン診療の流れ
――アトピー性皮膚炎であるとすでに診断が付いていて治療を受けたことがある人がオンライン診療で受診したときの診療の流れを教えてください。
オンライン診療でアトピー性皮膚炎の方が初診で来られた場合は、最初に当院のスタッフから「こういう流れで診察や処方をします」と説明させていただきます。その後に医師による診療が始まり、予約時に記載いただいた問診票を参考にしながら診察を進めていきます。
皮膚症状については、発疹が出ているところやかゆみが出ているところをカメラ越しに見せていただきます。顔や肘など見せやすい部位ならいいのですが、背中やお尻など映しにくい部位は、他の部位と比較してどの程度の症状なのかを聞き取って、そこから類推するような形で対応しています。また、頭皮もオンライン診療では確認しにくいので、どのぐらいかゆいか、どのぐらいカサカサしたフケが出るかを聞いて判断しています。
そして、今の皮膚の状態と今使っている薬の強さが合っているかを確認して、合っていないようなら薬を変更させていただくことがあります。また、薬を塗る量が少な過ぎるために症状が抑えられていない方もいらっしゃるので、外用薬の正しい塗り方やスキンケアの方法をビデオ越しにお伝えします。
この後に薬を処方しますが、初診の方だと本当に効くかどうか分からないので、薬は少なめに出し、1~2週間後に再診していただいて、効き具合を教えてくださいとお願いして診療を終えます。だいたい5~7分で終わることが多いですね。
――再診の場合もオンライン診療でいいですか?
もちろんです。再診していただくと「やっぱりこの薬が効きましたね」とか「ちょっと効きが悪いようなので別のものに変えましょうか」という形で、よりその方に合ったものを選んでいます。再診の方が初診よりもスムーズに診療が進むと思います。
※再診の方法はこちら
ただし、症状がとても重症であったり、合併症があったりするような場合はオンラインではなく対面で受診していただいた方がいいとアドバイスしています。特に、重症だと患部がジクジクして感染症を合併することもあり、そういう場合は見た目だけでは判断しにくいですし、抗生剤(抗菌薬)を使う必要があるので、対面受診をオススメしています。
多汗症のオンライン診療の流れ
――オンライン診療で多汗症の診断・治療はどのように進められるのでしょうか。
多汗症の主な特徴として、若い頃から悩んでいる方が多いこと、左右対称に症状が出ること、寝ている間は汗が止まりやすいことがあります。こういったことを問診で聞き取って、患者さんが日常生活で困っている(例:テストの時に手汗で紙が濡れて困る、脇汗が多くて服が着られないなど)のであれば薬を処方することを検討します。
多汗症には局所性と全身性があって、局所性で多いのは脇汗です。脇汗の場合は塗り薬から開始します。初診の場合は1~2週間分しか出せませんが、再診なら数か月分を処方することもあります。塗り薬で効きが悪いようならボトックス注射などを行います。
手汗については最近、新薬(塗り薬)が登場しました。新しい薬は発売から1年間は2週間分しか処方できないという決まりがあるのですが、オンライン診療を活用すれば、それほど時間的な負担をかけずに続けられると思います。
全身性については顔汗で困っている方が多いです。全身の汗を止める飲み薬もあるのですが、色々な副作用があるので処方は本当に困っている人に限られます。そういった場合もオンライン診療でしっかり問診と説明をして、ご理解いただいたうえで慎重に処方することができます。
オンライン診療が適さない皮膚の病気
――オンライン診療で対応できない皮膚の病気はありますか?
オンライン診療で対応できない皮膚疾患の多くは、皮膚感染症です。代表的な疾患として、「水虫」があります。水虫は白癬菌というカビの感染症なので、基本的には検査を行い陽性であれば処方を行います。また、とびひなどの細菌感染症は抗生剤の内服が必要になることがありますが、安易な処方は耐性を生じさせるリスクがありますので、慎重に判断しています。
――ウイルス感染症のヘルペスは、薬局でも買える薬がありますよね。オンライン診療は可能なのでしょうか?
ヘルペスは口や性器によく再発します。例えば口唇ヘルペスが再発した人で、前回はこの薬を飲んで治ったとか、お薬手帳に抗ヘルペス薬の記載があることが確認できたりすれば、オンライン診療でも問題なく処方できます。
再発性の口唇・性器ヘルペスの方は、オンライン診療の適している一方、初発の方の利用には注意が必要です。特に性器ヘルペスの場合は、ビデオ越しに診察が難しく、性行為によって感染することが多いので、他の性感染症の除外も必要になります。ただし、デリケートな部位なので診察を受けにくい、といった面もありますので、まずはオンラインで相談をすることは大切でしょう。
このように、一部の病気はオンライン診療で対応するのが難しいですが、皮膚科のほとんどの病気はオンライン診療で対応できます。採血検査が必要となるような強い薬は出せませんが、それに代わる薬や症状を緩和する薬が出せる場合が多いです。それらを試していただいて、問題がなければオンラインで継続して診ていくことができます。